マグリットの精神分析~フェチと暗い過去~

奇妙で不思議な画家

マグリット展に行き、そのまま帰るつもりだったが、美術館に美術関連の書籍の図書館があったので、そこに寄ってみた。すると、たまたま「シュルレアリストの精神分析」という本があったので読んでみた。そこには、さっき見たマグリットの精神分析が書かれていた。

マグリットはシュルレアリスムを代表する画家である。現実的にはあり得ないものがそこにあったり、あり得ない風景が広がっていたりと、かなり奇妙で不思議な絵を描くため、大衆受けする画家でもある。

しかし、ただ奇妙で不思議な絵を描いているわけではなかった。その絵からはマグリットの精神構造を読み取ることができる。

以下は「シュルレアリストの精神分析」に書かれていたものである。

絵から見るマグリットの精神構造

1. 恋人たち

  幼いころ、マグリットの母親は川に身を投げ自殺した。川から引き揚げられた母親の遺体、顔は着ていた寝巻にくるまれていたという。この絵には、顔が白い布にくるまれた男女が描かれている。マグリットはそこに死んだ母の姿を重ねたのではないか。

2. 凌辱

  マグリットはフェティシズムを持っていた、またそれは攻撃的なものであった。この作品では、女性の顔が女性の裸体になっており、人間の欲望、とくに体の部位に固執するフェティシズムを表していると考えられる。また女性の顔を裸体に変えることは一種の暴力的行為とも言える。

3. 釘付けにされた時間
  
  マグリットにとって絵は、現実にはあり得ない神秘を起こさせるものであった。蒸気機関車に組み合わせたものは、UFOでも火星人でもなく、どこにでもある家の暖炉。こうして、暖炉から蒸気機関車が出てくるこの作品ができた。マグリットは、普段どこにでもあるものを組み合わせて、神秘を生み出したのだ。

4. ゴルコンダ

  マグリットは父親が嫌いだった。その父親の存在を消し去りたかったのだ。この作品では、同じ格好をした紳士が、何人もおり、さらに宙に浮遊している。この絵は紳士を無意味化している。もしかしたら、この紳士は父親ではないか。だとしたら、父親を無意味化させようとしている、と考えられる。


本にはだいたいこのようなことが書かれていた。

マグリットの絵には、人間の欲望、トラウマ、過去の記憶といった、奥深い感情が含まれている。普通の順風満帆な人生を歩んでいれば、この絵は存在しなかった。負を背負って生きているからこそ、このような絵が描けたのだろう。

そして、人間誰しもが、欲望、トラウマ、暗い過去を背負って生きている。それを直視して生きなさい、そのようにマグリットに言われているような気がした。

現代社会にこそ「無意味」な芸術が必要

思えば、現代社会では様々なものが合理化され、画一化された。しかし、それにより理由を超越した不合理なもの・現象は排除され、人間の本質的な欲望や深層心理は覆い隠された。

それらすべてを奪還し、人間を本来の姿に戻させる、それができずとも、それを気づかさせる装置が、マグリットの絵であり、芸術ではないだろうか。

この現代社会にこそシュルレアリスム、芸術が必要だ。

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