画家「山口晃」と地理学

先日NHKの「日曜美術館」という番組に画家の山口晃さんが出ていたので、思わず見てしまった。山口さんの作品「ショッピングモール」の制作過程を紹介していたのだが、その作品の舞台は山口さんの故郷である群馬県桐生市だそうだ。

地理学的な作品テーマ「地方商店街の衰退」

桐生市は地方都市であり、山口さんが帰省するたびに、商店街はシャッター通りになり、空が広く感じるという。このような、中心商店街の衰退は全国の地方都市で起きている。そして、その原因のひとつは、地方都市に展開しているショッピングモールといえる。

欲しいものは何でもあるショッピングモールが郊外に進出すれば、中心商店街が衰退するのは必然だ。とくに地方都市は車社会であるため、購買意欲の高い、子連れのファミリー層は巨大な駐車場があるショッピングモールに行き、高齢者は中心商店街を利用するか、さもなくば買い物難民になっている。

山口さんは故郷である桐生市を作品に描こうとしたとき、この「地方のショッピングモールと壊滅した商店街」 とをテーマしようと考え、制作に取り掛かった。

”山口流”商店街の生き残り戦略

山口さんは、作品の中で、ショッピングモールはひとつの街であるとし、普通の商店街の周りに、ショッピングモール風の巨大な壁を作り、 商店一階もショッピングモールと同じ内装にし、アスファルトもはがし、ショッピングモールと同じ床にしている。

つまり、商店街をショッピングモール風に変えれば、みんな新しいショッピングモールだと思ってやってくる。だってショッピングモール=ひとつの街なのだから。山口さんは作品の中で、商店街の新しい生き残り戦略を描くと同時に、地方都市の悲しい現実を描いた。

地図を見ながらの作品づくり

このような「地方のショッピングモールと壊滅した商店街」という地理学の研究テーマを作品のテーマにした山口さん。地理学と芸術作品というコラボレーションが実現したといえる。

そのほかの山口さんの作品も、都市を建築物から電柱ひとつまで細かに描写したものが多い。もちろん架空の都市も緻密に描いている。

番組内では、山口さんが描いた建物が折り重なる不思議な橋の絵を紹介していたが、それを描く際、細かな平面図と断面図を描いていた。まさに架空都市づくりの職人といえよう。他にも、先ほどの作品は、googlemapの航空写真を見ながら作成するなど、地図を活用して作品づくりを行っていた。

地理と芸術の融合

今まで、街の風景を描いたり、架空の都市を描いたアーティストは多くいるが、ここまでリアルに、また緻密に架空の都市を描いた人はいただろうか。架空の都市という”現実世界である地理”と”芸術”を融合させた山口さんは、地理と芸術を融合させたアーティストだと私は思う。


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